Category Archives: 推理小説

名探偵は若い頃から名探偵だった『菩提樹荘の殺人』

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やっぱり安心する。
そんな感じのする火村シリーズ。

表題作もおもしろかったが、私のイチオシは「探偵青の時代」。

火村英生が大学生の時のちょっとした推理物語。

やっぱり彼は大学生の頃から火村英生だったんだというおかしな感想を持ちつつ、そうそう、そうでないと困る、とも思った。だって、火村英生が他の大学生みたいに飲み会やコンパに行きまくってたらおかしいでしょ。

でもって推理の方はさすが。猫好きだったことが功を奏したわけだけど、昔から猫好きだったんだね。

こういう過去のエピソードも交えた作品は微笑ましくていいな。

たまにこういうのをお願いします、と思いました。

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2016/06/03

火村シリーズではないけれど一気読みした「作家小説」

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大好きな有栖川有栖さんの短編集。

有栖川有栖さんの作品は、とても読みやすいのだけど、ところどころドキッとするような表現があったり、心に刺さるような言葉があったり、ものすごく奥の深い小説だと思っています。

私は火村シリーズが好きなので、そればかりを読んでいたのですが、ようやく(?)他の作品にも手を広げてみようかと思い、この作品を読みました。

なんともいえず、不思議な短編集ですね。

推理小説じゃないし、単なる小説でもないし、ちょっとホラーチック。「殺しにくるもの」なんて、最後のページで思いっきりどきっとしましたよ。

どれもそれぞれが雰囲気の違う作品で面白かったのですが、私は「奇骨先生」が好きです。

作家というとちょっと取っ付きにくい人や変わった人、個性的な人が多いように思われますよね。奇骨先生もちょっと怖い感じの人ですが、最後は心温まる締めくくりになっていて、何だか気持ちがほんわかしました。

あー、もっと早く読んでおけば良かったなあと思いました。すごく面白かったから。

有栖川作品は、推理の面白さはもちろんなんですが、私はそれぞれの登場人物のキャラクターがすごく好きなんですね。

主役以外の脇役たちもすごくいい味出している。たまに「こんな人とお友達になりたいなあ」と思ったりもします。それぞれの登場人物が生き生きしているから、ストーリーにどんどん引き込まれていくのかなと思います。

次はこの作品のレビューを書こうと思ってます。
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これなんかは、「え、そんなトリック?」って感じですけど、面白いですよ。
けっこう前に書かれた作品なのですが、全然古くない。
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2016/05/31

火村英生シリーズはドラマ化しないでほしかった・・・

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有栖川有栖さんは若い頃から好きな作家で、『スウェーデン館の謎 (講談社文庫)』や『ブラジル蝶の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)』など、過去の作品をKindleで再読しているのですが、やっぱり、時間をおいて読んでもおもしろいですよ。

昔は助教授だったんだな、なんてちょっと年月が経ったのを感じたりもして。

しかし、このシリーズだけはドラマ化しないで欲しかった・・・

そう思っている読者は、きっと私だけじゃないはず。

彼は彼で違うドラマなら魅力のある俳優さんなんだろうけれど、火村英生とはちょっとイメージが違う・・・

火村英生はセクシー路線とは無縁のはず。
じゃあ誰が良かったのかというとすぐには浮かびませんが、とりあえず、あのドラマ化はやめて欲しかったなと思います。

だから、結局1回も見ていない。

ああいうテレビドラマで原作の面白さをキチンと表現出来ていたものはほとんどないのだから。

猫が好きで、ぶっきらぼうなのになぜか子供の扱いが上手で、そして臨床犯罪学者。
うーん、誰が火村英生になれるんだろう・・・

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2016/05/19

最後まで読んでようやく分かるタイトルの意味『インシテミル』

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超古典的なテーマなんだけど

閉ざされた空間で1人1人殺されていく…この超古典的なテーマをどう面白く読ませるのか。今回は1人1人に与えられた凶器が違うのだから、それを見せ合えば一目瞭然、お前が犯人だ!で終わってしまうではないか…などという私の心配は杞憂だった。やはり、一筋縄ではいかない展開が待っていた。

なんといってもこの作品の面白さは古今東西のミステリとの絡みだろう。各自に割り当てられた鍵のかからない個室には“おもちゃ箱”が置いてあり、その中には凶器とその出典、殺害方法が記された〈メモランダム〉が入っている。これが必ずしも出典が正しいわけでもなかったりするのだが、古今東西のミステリをどのくらい読んでいるのかによって面白さが変わってくる作品なんだと思う。ミステリが好きで、いろんなジャンルの作品を読んでいる人にはそういう面白さもあるだろう。

やはり、してやられてしまった

私は結局犯人がわからなかったから、してやられたということだが、主人公・理久彦の楽天家ぶりが作品全体を陰湿にせず、むしろゲーム感覚(その方が恐ろしいか)で進んでいくかのようで重苦しくなることなく読めた。

面白かったのだが、惜しむらくは、時給11万2千円という高額バイトを募集した雇い主の目的がよくわからないので、このメンバーが集められた理由もぼやけていること、閉ざされた空間の恐怖はわかるけれども、そう簡単に殺人が起きるものかな、という感じがしなくもない。

とはいえ、この厚さの本を一気に読めたのだから満足であるよ。

映画もあるよ

映画はまだ見ていないが、登場人物と映画のキャストは必ずしも一致していないようなので、こちらも興味深々。

 

2014/09/11

女刑事と、頭に「女」がつくのは音道貴子は怒るだろうと思う『風の墓碑銘』

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音道&滝沢コンビ復活!

働く女性など珍しくもない世の中になったとはいえ、どこの会社にもどの世代にも女性蔑視の男性はまだまだいるし、本人は全く意識していなくても、やはり自分は女性なのだと周りから認識させられる場面は社会人を長くやっているといくらでもある。

貴子の場合は、警察という特殊な環境にあるから、特に苦労が多いんだろうが、貴子自身もバツイチだからか、少し身構えすぎな部分もなくはない。そんなに肩に力を入れなくても、と思う場面も多々あるが、しかし、その不器用な人間くささがこの小説の魅力の一つだ。

人間くささが乃南作品の魅力だと思う

登場人物がみな日常の、他人にとっては些細でとるに足らないような様々な悩みを抱えながらも日々一所懸命に生きている姿はリアリティがあり、その”人間くささ”の描写が素晴らしい。

これこそが乃南作品の真骨頂であり、事件は作品の中の一つのスパイスに過ぎない、という気すらしてくる。

今回の事件は、取り壊された古い家屋の床下から発見された古い人骨と、その家の持ち主だった痴呆老人殺しがどう絡んでいくかが見所だが、久々に滝沢刑事とのコンビ復活が何よりの楽しみだ。

滝沢刑事は警察に女だとお???ぐらいな頭の固さがありながら、心のどこかで貴子を認めている。

2人の出会いは『凍える牙 (新潮文庫)』だが(直木賞受賞作品ですよ。)、最初は反発し合いながらもだんだんと”同士”のようになっていく。

とはいっても、普通のフィクションのように「仲良しコンビ誕生」とならないところがいい。

簡単に打ち解けたりしないのが”リアリティ”

というのも、貴子と滝沢のコンビのよさは、”打ち解けていない”所だと思っている。そこがリアリティがあっていい。
初対面から反目し合っていた二人が、その後何度か接点があったとしても、そうそう仲良くなれるはずもない。

お互いの刑事としての資質はある程度認め合いながらも、決してそれを表立って褒める、ということはしない意地っ張り同士。しかし、それぞれにないところをしっかりと補い合える名コンビだと思う。

もしかしたら迷宮入りしてしまうかも、という今回の事件も、二人の粘り強さと執念で運命の女神は犯人に微笑むことはなかった。ただ、犯人を逮捕しても、二人の気持ちは全く晴れなかっただろうけれど、事件というものはそういうものなんだろうな、と思う。犯人逮捕は一つの区切りに過ぎず、失われた時間や亡くなった人が戻ってくるわけではない。ただ、大事な区切りではあるはず。今後の人生を生きていくための。

この二人の反目し合いながらも徐々に打ち解けていきそうな雰囲気は、今後の展開が楽しみである。再度、この名コンビとどこかで会いたいと思う。

しかし、副題に”女刑事 音道貴子”とあるのは、いつも違和感を感じるのだけど、女であることを協調したいんだろうか。

▼▼第115回直木賞受賞作品 『凍える牙』はこちら▼▼

2014/07/30

映画化したのかこれを、と驚いた『果てしなき渇き』

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ちょっと、胸が悪くなるよ・・・

衝撃的なプロローグから胸をえぐられるようなあらゆる暴力のオンパレード。「このミス大賞受賞」という帯にひかれて買ってみたものの、何度途中で読むのをやめようと思ったか。

元刑事の藤島は元妻からの連絡で行方不明になった娘を捜し始めます。しかし、元刑事とは思えないほどあまりに常識はずれで暴力的で、しかもなんだか性欲の固まりのようなこの男にまったく共感ができません。親ならもっと他の心配の仕方があろうかとも思いますが、離婚したのも警察を辞めるはめになったのも自業自得だと納得するほどまあ中身はぼろぼろの男ですね。

映画では、この男を役所広司さんが演じるのね。

しかも描かれているのは、世の中の悪という悪を集めたかと思えるような裏社会。こんなものがほんとにあったらどうしよう、あるとするなら、死ぬまでそんなものとは無縁でいたいと思う、言葉では表現しきれない不快感があります。

この話に、救いはあるんだろうか。

それでも読んでしまったのは、娘の加奈子がどうしてそんな裏社会とつながりをもつようになってしまったのか、どうしてそこまで冷徹な人間になってしまったのか、3人の子をもつ親として興味があったからかもしれません。

この小説の行き着く先は、どこかにほんの少しでも救いはあるのか、吐き気がするほどの暴力描写に耐えながら(笑)最後まで読んで・・・
せっかく買った本を途中でやめることはほとんどないので、がんばって最後まで読みました。

ああ、全てはこの最後のページのためだったんだな、と納得しました。この父親はとんでもない馬鹿で救いようのない親父だと思いますが、この男なりに娘を愛していたんだとわかりましたよ。

激しい暴力描写はとてもとても、と思う方にはおすすめできないんですが、ただ、読み始めたら最後まできちんと読んだ方がいいと思います(途中でやめると不快感だけが残るので)。最後まで読むと、ほんのちょっとだけ気持ちが持ち直しますよ。

映画は大筋原作通りのようですが、どうだろう、何を表現したいのか正直よくわからんです。たぶん、見に行かない。

2014/07/18

小説ならではの作品だと思っていたら映画も面白かった『ハサミ男』

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『ハサミ男』殊能 将之 講談社文庫

この不穏なタイトル、とても期待してページを最初にめくったのは2005年。今読み直してもおもしろい。

読んだあとに、この小説が映画になる、と聞いて驚いた。

この作品は著者のデビュー作で(これがデビュー作!?という出来。さすが1999年メフィスト賞受賞作)読んだことのある人ならばわかると思いますが、これをどうやったら、映像化できるんだろうと考えましたよ。最初に読んだときには、小説ならではの楽しみというか、映像では絶対に表現できないおもしろさだろうなあと考えていたから。

結構厚い本ですが、先が気になってスイスイ読めてしまいます。メインテーマは、刃の先をわざわざ研いで細らせ、それを首に突き立てるという「猟奇殺人」ですから結構えぐいのですが、捜査をする刑事さんなどが結構憎めないキャラクターだったりして、楽しく読むことができるのです。

私が想像したハサミ男は・・・色白、少し小太り、メガネをかけてる、年齢は20代からいっても30少し過ぎたくらい・・・そう、秋葉原なんかによく通ってそうな風貌。なんとなく、猟奇的な殺人犯にぴったり!?普段はおとなしくてどちらかというと目立たない、いわゆる「普通の人」。たぶんこれを読んだ人はそんな感想を持つのではないかなあ。

捜査をする刑事の視点と、ハサミ男の視点の両側から話が進んでいきます。同じ場面でも見る角度が違うとおもしろいものです。ハサミ男は自分がやっていない殺人が「ハサミ男」の仕業としてマスコミに取り上げられ、真犯人を探そうとするのですが、なんだか自分がハサミ男になったような気分で読めたりして。

映画の方は、賛否両論ですね。映画は映画として面白いけど、やはりこの作品のすごさを映像化するのはちょっと難しかったのかなと思う。しかしながら「別物」として見れば、ハイ有人の演技も素晴らしいので、それなりに楽しめるのではないかと思います。

映画には麻生久美子さんが出演してらっしゃいますが、麻生さんといえばこちらの作品もとてもいい作品ですよ。

『夕凪の街、桜の国』

2014/07/06